Our Story
"ただただ、彼女が肩身の狭い想いをすることがないように、世界をほんの少し作り替えておく必要があ...
恥ずかしながら知らなかった。 帝王切開の割合は全体の2割を超えていることを(厚労省が調査、発表している)。 あくまで主観的ではあるが、一般的に2割という数字は、無視するにはあまりにも高い割合と言えるのではないだろうか。 なお、医学的に必要でない場合でも帝王切開が行われているといった主張がある等、医学関係者の間でもその正当性や是非に関しては一部論争があるが、数字は紛れも無い事実だ。 加えて、今回KAISERを立ち上げるにあたり独自の調査を行ったところ、そういった科学的な議論とは真逆の、何の科学的根拠もない暴言が帝王切開で出産したお母さんに浴びせられているということが浮き彫りになった。 ”お産を楽すると、後が大変” ”産道を通っていない子どもは我慢強くなれない” これらは親世代から浴びせられる暴言だが、同世代の母親同士であっても、帝王切開での出産は表立って言いにくい風潮があるそうだ。 おかしい。 そんなことはおかしいだろ。 妻は頑張った。 何もしていない俺とは違って。 楽なお産なんかない。 それに帝王切開は傷だって残る。 腹筋を切るんだぞ。筋肉は維持するのは困難だ。 いつだって彼女は強く、逞しく、美しい。 そんな妻に感謝を伝えたい、そう思った時、KAISERは産声を上げた。 "ランジェリーをプレゼントするなんて、なんて下品な" そんな声もあるかもしれない。 だが、私は至って真剣だ。 妻のランジェリー姿を見られるのは私だけの特権だ。 それに、体型を気にする妻に、全くそんな心配は不要だと伝えられる。 ランジェリーのプレゼントという体験を通じて、妻はもちろん、自分自身も満たされる。 この幸せを皆さんにもお裾分けしたい。 それに、私はいつまでも絶対に忘れない。 世の中の帝王切開で出産したお母さんに対する風当たりの強さへの怒りを。 ただ、怒りはエネルギーにはなるが、結局は消費され何も残らない。...
"ただただ、彼女が肩身の狭い想いをすることがないように、世界をほんの少し作り替えておく必要があ...
恥ずかしながら知らなかった。 帝王切開の割合は全体の2割を超えていることを(厚労省が調査、発表している)。 あくまで主観的ではあるが、一般的に2割という数字は、無視するにはあまりにも高い割合と言えるのではないだろうか。 なお、医学的に必要でない場合でも帝王切開が行われているといった主張がある等、医学関係者の間でもその正当性や是非に関しては一部論争があるが、数字は紛れも無い事実だ。 加えて、今回KAISERを立ち上げるにあたり独自の調査を行ったところ、そういった科学的な議論とは真逆の、何の科学的根拠もない暴言が帝王切開で出産したお母さんに浴びせられているということが浮き彫りになった。 ”お産を楽すると、後が大変” ”産道を通っていない子どもは我慢強くなれない” これらは親世代から浴びせられる暴言だが、同世代の母親同士であっても、帝王切開での出産は表立って言いにくい風潮があるそうだ。 おかしい。 そんなことはおかしいだろ。 妻は頑張った。 何もしていない俺とは違って。 楽なお産なんかない。 それに帝王切開は傷だって残る。 腹筋を切るんだぞ。筋肉は維持するのは困難だ。 いつだって彼女は強く、逞しく、美しい。 そんな妻に感謝を伝えたい、そう思った時、KAISERは産声を上げた。 "ランジェリーをプレゼントするなんて、なんて下品な" そんな声もあるかもしれない。 だが、私は至って真剣だ。 妻のランジェリー姿を見られるのは私だけの特権だ。 それに、体型を気にする妻に、全くそんな心配は不要だと伝えられる。 ランジェリーのプレゼントという体験を通じて、妻はもちろん、自分自身も満たされる。 この幸せを皆さんにもお裾分けしたい。 それに、私はいつまでも絶対に忘れない。 世の中の帝王切開で出産したお母さんに対する風当たりの強さへの怒りを。 ただ、怒りはエネルギーにはなるが、結局は消費され何も残らない。...
"自分のことは自分でどうにかするので、妻と娘のことだけは何があっても助けてあげてください"
その日、アイツの表情はいつもと違ったんだ。 近所の飼い猫は夜になるといつもこの辺りを散歩していて、道ゆく人に鳴きながら擦り寄って行く。ただ、その日は様子が違った。 陣痛の痛みが強くなってきた妻を病院に連れて行くべく車のエンジンをかけたとき、アイツは現れた。なぜか道路の端を動かない。いつもはそんなことはないのに、きちんと座ってこちらをジッと見つめている。 猫は安産の象徴と言われる犬よりも実は安産な動物だ。 しかも交尾の際に排卵するという特徴もあり妊娠率がとても高い。不妊治療が保険適用になるような現代において、何とも羨ましい特性と言えよう。 そんな猫だから、待望の子宝に恵まれた私たちは神様のように接してきた。縁起が良い。お産はスムーズだろう。私はそう思った。 妻の陣痛の痛みはいよいよ強くなってきて一刻の猶予もなかった。病院に着くと私は駐車場で待機させられ、妻の電話を受けてCOVID-19の抗原検査を行なった。 よかった。陰性だ。立ち会い出産ができる。 少し緊張していたが、とにかく急いで病院へ入った。 看護師さんに検査結果を見せ、ガウンに着替えた。ナースステーションの外で待つ。立ち会い出産ができると言っても、出産直前にしか分娩室には入れないらしい。 病院の廊下から見える踏切をずっと見ていた。時刻は深夜2時過ぎ。電車は通らない。 そんな時、看護師さんに呼ばれた「旦那さん、ちょっとこちらへ」。 とても嫌な予感がした。 妻のいる部屋へ行くと赤ちゃんの心音がモニタリングされている。ただ、とても早い。 先生がこう説明した「破水の際に子宮内感染したと考えられます。赤ちゃんが苦しそうなので、すぐに出してあげないといけません。子宮口が十分に開いていないため、緊急帝王切開します」 私は言葉の意味は理解できたが言葉が出てこなかった。リスクはないのか?どのような手術なのか?それくらいのことは聞くべきだろう。でも、「お願いします」としか言えなかった。 この事態についていけなかったのだ。 自分に何ができるのだろう、と考えたのかもしれない。 私は妻を手術室まで見送った。その光景を今でもはっきりと覚えている。 大きなお腹を押さえながら、少し笑顔で「行ってきます」という妻に私は「頑張って」と消え入りそうな声で伝えた。 子どものためにお腹を切る手術に臨む妻に対して何と気の利かないことか。この10ヶ月頑張ってきたのに。この後に及んで、頑張って、とは。 指先を紙で切っただけで大騒ぎする私などとは比べ物にならないくらいに強く責任感のある妻にもっとかける言葉はあったろうに。 しばらく廊下をウロウロしながら待っていた。何分経ったかはわからない。時刻は深夜の3時半を過ぎていた。帝王切開ってのはこんなにも時間がかかるのか? すぐに赤ちゃんを出してあげないと危険なんだろ? どうしても気になってナースステーションを覗くと看護師さんたちが慌ただしく動いている。一人の看護師さんは電話で誰かと話している。 何かが起きているようだ。それも良くない何かが。 じっと覗いていると院長先生らしき男性と目があって手招きされた。 「赤ちゃんは3時2分に産まれています。ただ、赤ちゃんは呼吸が上手くできていません。腕に力も入らないようです。すぐに近くのNICUのある病院に搬送します」 コイツは何を言っている?俺の子の話をしているのか? ただでさえ緊急の帝王切開だぞ。それに加えて夫婦が心待ちにしている子どもに何か起きているなんて、理解が追いつかなかった。...
"自分のことは自分でどうにかするので、妻と娘のことだけは何があっても助けてあげてください"
その日、アイツの表情はいつもと違ったんだ。 近所の飼い猫は夜になるといつもこの辺りを散歩していて、道ゆく人に鳴きながら擦り寄って行く。ただ、その日は様子が違った。 陣痛の痛みが強くなってきた妻を病院に連れて行くべく車のエンジンをかけたとき、アイツは現れた。なぜか道路の端を動かない。いつもはそんなことはないのに、きちんと座ってこちらをジッと見つめている。 猫は安産の象徴と言われる犬よりも実は安産な動物だ。 しかも交尾の際に排卵するという特徴もあり妊娠率がとても高い。不妊治療が保険適用になるような現代において、何とも羨ましい特性と言えよう。 そんな猫だから、待望の子宝に恵まれた私たちは神様のように接してきた。縁起が良い。お産はスムーズだろう。私はそう思った。 妻の陣痛の痛みはいよいよ強くなってきて一刻の猶予もなかった。病院に着くと私は駐車場で待機させられ、妻の電話を受けてCOVID-19の抗原検査を行なった。 よかった。陰性だ。立ち会い出産ができる。 少し緊張していたが、とにかく急いで病院へ入った。 看護師さんに検査結果を見せ、ガウンに着替えた。ナースステーションの外で待つ。立ち会い出産ができると言っても、出産直前にしか分娩室には入れないらしい。 病院の廊下から見える踏切をずっと見ていた。時刻は深夜2時過ぎ。電車は通らない。 そんな時、看護師さんに呼ばれた「旦那さん、ちょっとこちらへ」。 とても嫌な予感がした。 妻のいる部屋へ行くと赤ちゃんの心音がモニタリングされている。ただ、とても早い。 先生がこう説明した「破水の際に子宮内感染したと考えられます。赤ちゃんが苦しそうなので、すぐに出してあげないといけません。子宮口が十分に開いていないため、緊急帝王切開します」 私は言葉の意味は理解できたが言葉が出てこなかった。リスクはないのか?どのような手術なのか?それくらいのことは聞くべきだろう。でも、「お願いします」としか言えなかった。 この事態についていけなかったのだ。 自分に何ができるのだろう、と考えたのかもしれない。 私は妻を手術室まで見送った。その光景を今でもはっきりと覚えている。 大きなお腹を押さえながら、少し笑顔で「行ってきます」という妻に私は「頑張って」と消え入りそうな声で伝えた。 子どものためにお腹を切る手術に臨む妻に対して何と気の利かないことか。この10ヶ月頑張ってきたのに。この後に及んで、頑張って、とは。 指先を紙で切っただけで大騒ぎする私などとは比べ物にならないくらいに強く責任感のある妻にもっとかける言葉はあったろうに。 しばらく廊下をウロウロしながら待っていた。何分経ったかはわからない。時刻は深夜の3時半を過ぎていた。帝王切開ってのはこんなにも時間がかかるのか? すぐに赤ちゃんを出してあげないと危険なんだろ? どうしても気になってナースステーションを覗くと看護師さんたちが慌ただしく動いている。一人の看護師さんは電話で誰かと話している。 何かが起きているようだ。それも良くない何かが。 じっと覗いていると院長先生らしき男性と目があって手招きされた。 「赤ちゃんは3時2分に産まれています。ただ、赤ちゃんは呼吸が上手くできていません。腕に力も入らないようです。すぐに近くのNICUのある病院に搬送します」 コイツは何を言っている?俺の子の話をしているのか? ただでさえ緊急の帝王切開だぞ。それに加えて夫婦が心待ちにしている子どもに何か起きているなんて、理解が追いつかなかった。...